第四セミナー:「代弁の影響学」
平野暁人+サミール・サアッド+有吉玲
日時:2025年3月12日(水)|18:00 - |ハイブリッド形式|対面(定員20人):東京大学駒場キャンパス18号館コラボレーションルーム1
イラク有数の「泣き女」である母親に育てられ、フランスに亡命した後、伝説の前衛演劇グループ《太陽劇団》の俳優となったサミール・アブドゥル・チャバール・サアッドさんと、セネガルで実際に起きた同性愛へのヘイトクライムとしての墓暴きを題材に、ゴンクール賞受賞作家であるモハメド・ムブガル=サールが書いた小説『純粋な人間たち』を日本語に訳したパフォーマーの平野暁人さん。二人の間に、パリで演劇を学ぶ有吉玲さんを《蝶番》として挟み、「泣き女」や「現実の事件の小説化」という《他者の声を代弁する行為》を、演技や翻訳を通じてさらに代弁していく試みの中で浮かび上がる暴力と死、現実と表象の関係、そしてそこから際立つ墓の影響について、通訳を適宜交えながら語り合います。
第一幕:泣き女をめぐって(上演:サミール・サアッド|仏日通訳:有吉玲)
第二幕:『純粋な人間たち』をめぐって(発表:平野暁人|日仏通訳:有吉玲)
第三幕:寄合的ディスカッション(サミール・サアッド+平野暁人+有吉玲+中井悠)
出演:
サミール・アブドゥル・チャバール・サアッド(俳優/太陽劇団)
平野暁人(翻訳家/多言語パフォーマー)
有吉玲(パフォーマー/俳優・コンセルヴァトワール・セルジー/副産物ラボ)
中井悠(司会/副産物ラボ)
サミール・アブドゥル・チャバール・サアッド|1950年代半ばにイラクの宗教都市カルバラーで「泣き女」の祖母と母のもとに生まれる。バグダッドの美術学校演劇科に入学し、1976年に最優秀演出家賞を受賞して卒業。兵役の後、パリ高等研究実習院での修士課程の後、ソルボンヌ大学で映画と社会科学のDEAを取得、1990年には演出家ヴェルナー・シュレーターに関する博士号を取得。現在は俳優としてアリアーヌ・ムヌーシュキンの《太陽劇団》に所属。
平野暁人|戯曲を中心に小説、精神分析、ノンフィクションまで幅広く手掛ける傍ら、舞台芸術専門の通訳者ならびに多言語パフォーマーとして国内外で活動。主な訳書に『「ひとりではいられない」症候群』(講談社)、『隣人ヒトラー』(岩波書店)、『純粋な人間たち』(英治出版)など。2025年1月1日、noteにて発表した詩的試論「もうすぐ消滅するという人間の翻訳について」が1週間で20万超のアクセスを記録。
有吉玲|東京大学文学部美学芸術学研究室を休学、パリ近郊コンセルヴァトワール・セルジー(CRR,演劇演技科)在籍。劇と詩を中心としたバフォーマンス制作をおこなう。第三回西脇順三郎賞新人賞奨励質など。中井悠による訳書『調査的感性術』講義を契機に副産物ラボと協力。
第五セミナー:「霊」の影響学
三島覚道+小林樹恵
日時:2025年3月14日(金)|16:00 - 18:00|広島県福山市不動院からオンライン配信
全国から墓じまいでいらなくなった墓石を大量に集めて供養している「墓の墓」を運営する広島県福山市の不動院。その活動の背景には、墓を「霊のおうち」とみなす、住職の三島覚道さんと副住職の小林樹恵さんの死者と霊に対する強い思いがあります。すでに副産物ラボで行なった二度の見学調査の様子を通じて「墓の墓」を紹介する映像の上映に続き、加持祈祷師でもある三島さんと霊媒師でもある小林さんに、これまでの人生を振り返りながら「墓の墓」について語っていただきます。
第一幕:映像上映《「墓の墓」をめぐって》(監督:冨田萌衣)
第二幕:インタヴュー《「墓の墓」をめぐって》(三島覚道+小林樹恵+副産物ラボ)
出演:
三島覚道(不動院住職・加持祈祷師)
小林樹恵(不動院副住職・霊媒師)
冨田萌衣(考古学・東京大学/副産物ラボ)
奥田涼花(建築・東京大学/副産物ラボ)
鈴木ミユキ(医療人類学・東京科学大学/副産物ラボ)
中井悠(司会/副産物ラボ)
第六セミナー:再生の影響学
豊田雅子+横谷奈歩+小野環
日時:2025年3月16日(日)|17:00 - |ハイブリッド形式|対面(定員10人):VILLA WASAKU|広島県尾道市長江2丁目18−21
第一セミナーにお呼びした阿部純さんと津口在五さんが住む広島県尾道で「空き家再生プロジェクト」を手がける豊田雅子さんと、空き家に畳み込まれたかつての住人の生活の記録・記憶からその再演を試みるプロジェクトなどを手がけてきたアーティストの横谷奈歩さんをお呼びして、それぞれの活動における「再生」と、その背景を成す「死」について語っていただきます。そして同じ尾道でアーティストインレジデンシー「AIR Onomichi」を主催する美術家の小野環さんを《蝶番》として挟みながら、「墓=おうち」をひっくり返した「おうち=墓」という見立ての可能性と影響について話し合います。最近再生された、尾道の画家小林和作が長く住んでいたおうちから生中継でお届けします。
第一幕:《尾道の空き家再生をめぐって》(豊田雅子)
第二幕:《記憶が作るあらたな歴史と物語》(横谷奈歩)
蝶番:《2度目の死を遅らせる》(小野環)
第三幕:寄合的ディスカッション(豊田雅子+横谷奈歩+小野環+植村朔也+中井悠)
出演:
豊田雅子(尾道空き家再生プロジェクト代表)
横谷奈歩(アーティスト・九州大学)
小野環(美術家・AIR Onomichi・NPO法人尾道空家再生プロジェクト・尾道市立大学)
植村朔也(演劇批評・東京大学/副産物ラボ)
中井悠(司会/副産物ラボ)
豊田雅子|尾道生まれ、尾道育ち。大阪で海外旅行の添乗員として世界を駆け回ったのちにUターンし、坂と路地が織りなす旧市街独特の面白さを次世代にという思いで、2007年に尾道空き家再生プロジェクトを発足。「尾道ガウディハウス」や「ゲストハウスみはらし亭」など20軒ほどの空き家を再生活用、尾道市空き家バンクを中心に移住定住の支援にも力を入れる。コミュニティ、建築、環境、観光、アートの5つの視点から増加する空き家の活用を考え、人が近いヒューマンスケールのまちづくりを提唱 。
横谷奈歩 |国内外へ足を運び、調査と取材および滞在制作を重ねながら、土地に隠された歴史やその場所に残るひそやかな物語をテーマとした制作活動を行う。代表的なプロジェクトに、「高橋家にまつわる物語」「星劇団再演プロジェクト」、写真シリーズ「剝離された場所」、異分野の専門家との共同プロジェクトに「アートとサイエンスのあいだ」「芸術と考古学」「驚異の小屋」等がある。
小野環|1973年北海道函館市生まれ。広島県尾道市在住。美術家。1998年東京藝術大学大学院美術研究科修士課程絵画(油画)専攻修了。絵画とインスタレーションを軸に、日常の事物や場所の来歴に注目した作品を制作。並行して、アーティスト・イン・レジデンスの運営や空き家再生活動を起点に、様々な領域の専門家とコラボレーションしつつ活動を展開。2006年よりアーティストユニット「もうひとり」としても活動。2007年よりAIR Onomichiの企画運営を行う。主な展覧会に「いにしによるー断片たちの囁きに、耳をー」(瀬戸内海歴史民俗資料館、2022年)、「Re-edit再編」(光明寺會舘、2022年)、「ONLY CONNECT OSAKA」(CCO クリエイティブセンター大阪、2019年)、「複数形の世界にはじまりに」(東京都美術館、2018年) 「VOCA展2004 現代美術の展望―新しい平面の作家たち」(上野の森美術館、2004年)など。キュレーションに「未完の和作」(小林和作旧居、2024年)「NEW LANDSKAP シュシ・スライマン展」(尾道市立美術館ほか、2023年)などがある。2021年第24回岡本太郎現代美術賞特別賞、2016年 小林和作賞受賞。現在、尾道市立大学芸術文化学部美術学科教授、AIR Onomichi実行委員会代表、NPO法人尾道空き家再生プロジェクト副代表理事。